山梨市内のアパートから山梨県南アルプス市へと引っ越してきたというS様ご一家。ご主人と奥様、お子様3人の5人家族が暮らすお宅は、大通りから少し外れた静かな住宅街にあります。「まだ暮らしはじめて1年程度」だと話すご家族の新しい暮らしや、子育てを通じて感じる家のよさなどについて、お話を聞いてきました。
自然素材ならではの"空気感"に惹かれて
「最初から、自然素材をたくさん使った家をつくりたいねと話していたんです」と教えてくれたのは奥様。"木を使うこと"にこだわったというだけあって、玄関からリビングへと足を踏み入れた瞬間、無垢材のやさしい香りが伝わってきました。「旅行から帰ってきたときなど、特に癒されますね。この香りをかぐと、帰ってきたなぁと感じるようになりました」。新しい住まいでの暮らしは順調なご様子。そんなS様ご夫婦に、まずは家づくりのきっかけから聞いてみました。
「長女が小学校に入学するまでには家を建てようと思っていたんです。何度も住宅展示場を見に行ったり、インターネットで比較したりもしていました。その中で、人工材と自然材とでは室内の空気感がまったく違うと感じたんです。うちは子どもも多いし、ずっと住む家だからこそ、なるべくいい環境を用意してあげたいと考えるようになりました。匠家さんとの出会いはとある構造見学会。自然素材に対するこだわりがすごく伝わってきて。それが決め手になりました」。
しかし、それからしばらくは長男の妊娠・出産、奥様の職場復帰......と、慌ただしい日々が続き、家づくりは一旦休止状態に。奥様が3度目の産休に入るタイミングで、土地選びと家づくりを同時に再開したそうです。「長女の小学校入学が間もなくという時期だったので、匠家さんにはかなり急いでもらっちゃいました」と奥様。
ちなみに、この土地を家族の拠点に選んだ理由は何だったのでしょうか。「この家の周りは静かですが、大通りが近くにあるので交通の便がいいんです。主人の実家とも近く、小学校の区域的にも希望に近かったので、私たち家族が生活する上で非常に便利な場所でした」。
子どもたちの成長に合わせて、あそべる、学べる
設計時にこだわったのは、子どもたちの暮らしやすさ。話を聞いていくと、S様の家は、いたるところに子どもたちに対する思いやりが込められていることがわかります。
「料理をしているときも、リビングや和室が見渡せるようにしたかったんです」という奥様の言葉通り、キッチンからはダイニングスペースに限らず、1階の空間ほぼすべてが見渡せる仕様になっています。これなら、子どもたちがどこにいても、何をしていても、すぐにキャッチできそう。 「和室は客間としても使えるようにしていますが、普段は扉を開けてリビングと一体の空間にしています」とご主人。リビング、和室、キッチン......どこにも段差がないから、まだ足取りがおぼつかない年齢でも、つまずくことなく自由に行き来できると言います。
そして、気になるのはリビングとキッチンのサイドにある細長いテーブル。実はこれ、ご夫婦共に職業が教員という、S様ご一家らしい工夫があるのだとか。「いずれリビング学習するのにいいだろうと思って、折りたたみ式のスタディコーナーを設けています」。将来、子どもたち3人が揃って勉強することを見据えてつくられた空間は、家族全員で座ってもまだ余裕がありそうです。
「今は私たちがPC作業をするのに使っています。コンセントやLANケーブルの接続口などは、家族の誰がどんな用途で使っても使いやすいよう配置してもらいました。折りたたみ式にしたのもあえてですね。うちはキッチンにパントリーをつけなかったので、いざというときはここに収納棚を置いたりできるようにしています」と奥様。どんなライフスタイルにも馴染む柔軟性の高い設計は、子どもたちがまだ小さいS様ご一家ならではかもしれません。
走り回れて、鉄棒も使えて、ぐっすり眠れる2階
キッチンの奥にある階段をのぼると、目に飛び込んできたのは子どもたち専用の鉄棒。2階は廊下がなく、扉もすべて引き戸式。子どもたちがあそぶのにピッタリな、解放的な空間になっています。「昼は子どもたちのあそび場として、夜は家族の寝室として使っています。子どもたちが大きくなって、必要があれば仕切りを入れて個室にできるように設計してもらいました」とご主人。
「以前暮らしていたアパートは2階だったので、常に子どもたちの足音などを気にしていたんです。静かにしなさいと注意しなければいけないことも多くて......そういう悩みが、この家ではすべて解消されました」と奥様も続けます。取材中、体操クラブに通っているという長女のYちゃんが部屋の中で側転を披露してくれると、他の2人も続けてマネしてくれました。思いっきり笑い合う兄弟の風景は、実に楽しそう。
今はまだ1階で過ごすことの方が多いという子どもたち。では、2階は日中、どのように活用しているのでしょうか。「このあたりは風が強くて、外に洗濯物を干しているとすぐに飛んでいってしまうんです。だから基本的に部屋干し。夏は湿気も多くなると思いますが、洗濯物が多い日でもじめじめ感がないんですよね。壁の素材をすべて漆喰にしたので、うまく吸収してくれているんだと思います。年中快適ですよ」。自然素材へのこだわりは、生活の利便にもしっかりと活かされている様子です。
収納の多さは、暮らしやすさ
おもちゃや勉強道具など、子どもたちのアイテムは手の届きやすいスペースや棚に置いてありますが、ご夫婦の小物などはどこに収納しているのでしょうか。「そこにいろいろなものを収納しています」と見せてくれたのは、玄関からダイニングへと続く3畳ほどの土間スペース。靴はもちろん、上着やちょっとした小物など、いろいろなものをまとめて収納されていました。雨の日の帰宅時など、濡れたレインコートなどをここで脱げば部屋が汚れる心配もなさそうです。
「あとは、2階の和室に押し入れではなくウォークインクローゼットを付けてもらったので、そこも活用しています」とご主人。そうした広い収納スペースをいくつか設けることで、家全体をスッキリとまとめているのですね。
賑やかに、健やかに。これからもずっと
太陽の光をたっぷりとリビングに届けてくれる大きな窓を開けると、庭のウッドデッキにつながっています。「親戚や友人を呼んで、バーベキューすることもありますね。リビングから庭への行き来がしやすいので、キッチンで肉や野菜を切って、そのまま運べるんです」とご主人。実家の近くということもあり、親戚同士でこの家に集まる機会も増えたそうです。
庭の一角には家庭菜園のスペースもありました。イチゴ、ナス、ピーマン、チンゲン菜などの植物が植えられ、子どもたちはその成長を楽しみにしているそう。「イチゴが食べ頃になると勝手に食べちゃったりもするんです。でも、植物が育つ様子を間近で見るのも勉強になるだろうって。ここの暮らしにもずいぶん慣れてきたので、これからもう少し緑を増やしたいなと考えています」。
子どもたちの成長を見守るご夫婦の愛情が、家のいたるところにあらわれているS様の家。「今も、これからも、大人になっても。子どもたちにとって"帰ってきやすい家"でありたいですね」と話すご主人。3人の子どもたちが楽しそうに過ごす様子からは、その愛情がしっかりと伝わっていることがうかがえます。